【追記】13年8月10日〜12日の各地最高気温・最低気温
◇8月10日、約6年ぶりに40℃を超える観測地点が記録されました。
高知県の江川崎観測所(四万十市西土佐江川崎)で13:06に記録された40.7℃を皮切りに、13:56には甲府地方気象台(山梨県甲府市飯田四丁目)で40.1℃(14:31にはさらに40.7℃まで上がる)が、14:29には山梨県の勝沼観測所(甲州市勝沼町勝沼)で40.5℃、14:41には群馬県の館林観測所(館林市美園町)で40.1℃と、国内4か所で40℃以上を記録しました。
観測所の数は昔と比べて増えているため一概には比較すべきではありませんが、約6年前の07年8月16日に熊谷地方気象台(埼玉県熊谷市桜町一丁目)と多治見観測所(岐阜県多治見市光ケ丘二丁目)で観測史上初の40.9℃を記録した日に次ぐ暑さであったと言ってよいでしょう。
あの日は熊谷と多治見の他に、越谷観測所(埼玉県越谷市大字北後谷)で40.4℃、館林観測所で40.3℃、美濃観測所(岐阜県美濃市前野中川原)で40.0℃と、今回を超える5か所で40℃超を記録しています。
◇ところで次にあげる産経新聞の記事には誤りがあります。
分かりますか?(産経を取り上げたのは記事の寿命が長いからです)
日本列島は10日も晴れて厳しい暑さとなり、甲府市と高知県四万十市で昼すぎに国内観測史上4位となる最高気温40・7度を記録した。40度超を観測したのは2007年8月16日以来6年ぶり。
気象庁によると、35度以上の猛暑日となったのは東北から九州の広い範囲で、観測地点927のうち今夏最多の290に達した。
列島の広い範囲が大気の上層まで高気圧に覆われ、晴れて強い日射しにさらされた。40度超の地点はいずれも内陸部で風が弱く、暖められた空気が周囲とあまり混じり合わなかったのが要因とみられる。
最高気温が高かった地点は、山梨県甲州市40・5度、群馬県館林市40・1度、埼玉県鳩山町39・8度。甲州市など26地点はそれぞれの観測史上最高だった。東京都心も37・4度まで上がった。30度以上の真夏日地点は600を超えた。
国内の観測史上最高記録は、07年8月16日に40・9度を観測した埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市。次いで1933年7月25日の山形市40・8度の記録がある。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130810/dst13081017000018-n1.htm
実は07年8月16日に40.9℃を記録した多治見観測所ではその翌17日も40.8℃を記録していますので、正しくは「40度超を観測したのは2007年8月17日以来6年ぶり」とすべきです。
記録は更新されなければ埋もれ去るという事例の典型というべきでしょうか(苦笑)
そして記録は更新されなかったものの、8月11日も13:35に江川崎観測所で40.4℃を、14:37に甲府地方気象台で40.6℃を記録しました。
2日連続40℃超を記録したのは07年8月16日〜17日の多治見観測所以来のことです。
さて観測史上初の3日連続は果たしてあるのでしょうか…。
◇【追記】
すでにニュースでご存知かと思いますが、その後8月12日、12:54に江川崎で40.4℃を記録し、観測史上初の3日連続40℃超を達成すると、ついに13:42には観測史上最高の41.0℃をも記録することになりました。
まさに歴史的な暑い夏となったわけです。
◇また惜しくも(?)40℃超を逃したのが千葉県の茂原観測所(茂原市早野字川中島)です。
12:54に39.9℃を記録しましたが、その後は伸びず40℃超は記録されませんでした。
0.1℃差で40℃超を記録できず、その後も更新できないままの地点は他に5か所、名古屋地方気象台(愛知県名古屋市千種区日和町二丁目/42年8月2日)、鶴岡観測所(山形県鶴岡市錦町/78年8月3日)、大月観測所(山梨県大月市大月/90年7月19日)、豊中観測所(大阪府豊中市蛍池西町/94年8月8日)、鳩山観測所(埼玉県比企郡鳩山町赤沼字雷/97年7月5日)があります。
ちなみに6年前に40.9℃を記録した熊谷と多治見はそれまで39.9℃が最高記録だったのです。
◇というわけで、分かりやすいように下の表にまとめてみました。
順位 | 観測値 | 観測所 | 都道府県 | 起日 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 41.0℃ | 江川崎 | 高知県 | 2013年8月12日 | |
2 | 40.9℃ | 熊谷* | 埼玉県 | 2007年8月16日 | |
〃 | 〃 | 多治見 | 岐阜県 | 〃 | |
4 | 40.8℃ | 山形* | 山形県 | 1933年7月25日 | |
〃 | 〃 | 多治見 | 岐阜県 | 2007年8月17日 | |
6 | 40.7℃ | 甲府* | 山梨県 | 2013年8月10日 | |
〃 | 〃 | 江川崎 | 高知県 | 〃 | |
8 | 40.6℃ | 甲府* | 山梨県 | 2013年8月11日 | |
〃 | 〃 | 天竜 | 静岡県 | 1994年8月4日 | |
〃 | 〃 | かつらぎ | 和歌山県 | 1994年8月8日 | |
11 | 40.5℃ | 勝沼 | 山梨県 | 2013年8月10日 | |
12 | 40.4℃ | 甲府* | 山梨県 | 2004年7月21日 | |
〃 | 〃 | 越谷 | 埼玉県 | 2007年8月16日 | |
〃 | 〃 | 江川崎 | 高知県 | 2013年8月11日 | |
15 | 40.3℃ | 愛西 | 愛知県 | 1994年8月5日 | |
〃 | 〃 | 上里美 | 群馬県 | 1998年7月4日 | |
〃 | 〃 | 館林 | 群馬県 | 2007年8月16日 | |
18 | 40.2℃ | 宇和島* | 愛媛県 | 1927年7月22日 | |
〃 | 〃 | 越谷 | 埼玉県 | 1997年7月5日 | |
〃 | 〃 | 佐久間 | 静岡県 | 2001年7月4日 | |
〃 | 〃 | 牛久 | 千葉県 | 2004年7月20日 | |
〃 | 〃 | 館林 | 群馬県 | 2007年8月15日 | |
23 | 40.1℃ | 酒田* | 山形県 | 1978年8月3日 | |
〃 | 〃 | 館林 | 群馬県 | 2013年8月10日 | |
25 | 40.0℃ | 前橋* | 群馬県 | 2001年7月24日 | |
〃 | 〃 | 美濃 | 岐阜県 | 2007年8月16日 | |
27 | 39.9℃ | 名古屋* | 愛知県 | 1942年8月2日 | |
〃 | 〃 | 熊谷* | 埼玉県 | 1998年7月5日 | |
〃 | 〃 | 甲府* | 山梨県 | 2004年7月20日 | |
〃 | 〃 | 鶴岡 | 山形県 | 1978年8月3日 | |
〃 | 〃 | 大月 | 山梨県 | 1990年7月19日 | |
〃 | 〃 | 豊中 | 大阪府 | 1994年8月8日 | |
〃 | 〃 | 館林 | 群馬県 | 1997年7月5日 | |
〃 | 〃 | 鳩山 | 埼玉県 | 〃 | |
〃 | 〃 | 天竜 | 静岡県 | 2001年7月24日 | |
〃 | 〃 | 多治見 | 岐阜県 | 2001年8月1日 | |
〃 | 〃 | 茂原 | 千葉県 | 2013年8月11日 |
太字は観測所の極値を、「*」は観測所が気象台であることを示しています。
記録は地方気象台を優先し、次に起日、最後に観測所の五十音の順に並べています。
◇最高気温の陰でひっそりと記録されたのが最低気温の最高値です。
13年8月11日の東京管区気象台(東京都千代田区大手町一丁目)では2:37に1度30.9℃まで下がったものの、そこから気温が上昇して夜が明けました。
最低気温は普通、未明に記録することがほとんどですが、日中都心で降雨が起こり(実は大手町では降雨は観測されていない)、16:01に30.5℃まで下降したために日の出以降に最低気温を更新することになります。
しかしここから再び気温は上昇して18時には33.7℃まで達し、その後気温は下がるものの23:49に30.4℃まで落ちたところで日が変わりました。
つまりこの日の最低気温は30.4℃となり、1日を通して30℃を下回らない「超熱帯夜」とも言うべき記録的な1日になったのです。
この記録がいかに珍しいものなのか、類似の記録と合わせて表にまとめてみました。
順位 | 観測値 | 観測所 | 都道府県 | 起日 |
---|---|---|---|---|
1 | 30.8℃ | 糸魚川 | 新潟県 | 1990年8月2日 |
2 | 30.4℃ | 東京* | 東京都 | 2013年8月11日 |
3 | 30.3℃ | 小松 | 石川県 | 2000年7月31日 |
4 | 30.2℃ | 上市 | 富山県 | 1997年8月9日 |
5 | 30.1℃ | 富山* | 富山県 | 2000年7月31日 |
〃 | 〃 | 糸魚川 | 新潟県 | 1999年8月6日 |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 2000年7月31日 |
8 | 30.0℃ | 越廼 | 福井県 | 〃 |
9 | 29.9℃ | 富山* | 富山県 | 1994年8月14日 |
今までの記録はいずれも北陸地方ばかりでしたが、今回はフェーン現象によるものではなく、ヒートアイランド現象によるものであったことが記録的であったと言えるでしょう。
◇最高気温40℃超や、最低気温30℃超が記録されると新たな呼び名をつけるべきではないかという声が上がりますが、こうして見るとそれぞれ26件と8件と、ほとんど記録されない特異値であることが分かります。
そのような年に1度あるかないかというケースのために新たな気象用語を作る意味はほとんどないのではないでしょうか。
記録が更新されようがされまいが、まだまだ暑い日は続きます。
「熱射病 防ぎ方」でググって対策を怠らぬよう気を付けて下さい。
◇気温等の気象データはすべて下記の気象庁ウェブサイトより引用しています。