衆議院比例区の自民改正案で前回衆院選を計算してみた
昨年行われた衆院選は、解散前に行われた野田総理(当時)と安倍総裁の党首討論で衆議院の定数削減を選挙後速やかに行うことを約束に行われたことは、まだ記憶に新しいかと思います。
自民党は細田幹事長代行が中心となって衆議院比例区の改革案を取りまとめました。
それが以下のような案です。
2.現在11あるブロックを一部統合し、8とする。
(「北海道+東北」「北陸信越+東海」「中国+四国」)
3.150議席のうち90議席を全政党によりドント方式で配分し、残り60議席を「優遇枠」とし、比例2位以下の政党によりドント方式で配分する。
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-syugiin20130314j-04-w500
比例定数が減ることで少数政党が議席を獲得することが困難になり、当初より懸念されていました。
そこで3.のような「奇策」が編み出されたのでしょうが、果たしてこれで少数政党は議席を減らさずに生き残れるのでしょうか。
そこで前回の衆院選がこの自民党案で行われていたならばどうなっていたのか計算してみました。
自民 | 維新 | 民主 | 公明 | みんな | 共産 | 未来 | 大地 | 社民 | 定数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道+東北 | 8 | 3 | 5 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 22 |
北関東 | 6 | 4 | 3 | 3 | 2 | 1 | 1 | - | 0 | 20 |
南関東 | 6 | 5 | 4 | 2 | 3 | 1 | 1 | - | 0 | 22 |
東京 | 5 | 3 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | - | 0 | 17 |
北陸信越+東海 | 11 | 7 | 6 | 3 | 3 | 1 | 1 | - | 0 | 32 |
近畿 | 7 | 10 | 3 | 4 | 2 | 2 | 1 | - | 0 | 29 |
中国+四国 | 7 | 4 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 17 |
九州 | 7 | 4 | 3 | 3 | 1 | 1 | 1 | - | 1 | 21 |
合計 | 57 | 40 | 30 | 22 | 14 | 8 | 7 | 1 | 1 | 180 |
定数減によりそれぞれのブロックが以下のようになります。
北海道+東北:22→18(うち優遇枠は7)
北関東:20→17(うち優遇枠は7)
南関東:22→18(うち優遇枠は7)
東京:17→15(うち優遇枠は6)
北陸信越+東海:32→27(うち優遇枠は11)
近畿:29→25(うち優遇枠は10)
中国+四国:17→13(うち優遇枠は5)
九州:21→17(うち優遇枠は7)
計算結果がこちらです。
自民 | 維新 | 民主 | 公明 | みんな | 共産 | 未来 | 大地 | 社民 | 定数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道+東北 | 4 (-4) | 4 (+1) | 4 (-1) | 2 (0) | 2 (+1) | 0 (-1) | 2 (+1) | 0 (-1) | 0 (0) | 18 |
北関東 | 4 (-2) | 4 (0) | 4 (+1) | 3 (0) | 2 (0) | 0 (-1) | 0 (-1) | - | 0 (0) | 17 |
南関東 | 4 (-2) | 6 (+1) | 4 (0) | 2 (0) | 2 (-1) | 0 (-1) | 0 (-1) | - | 0 (0) | 18 |
東京 | 3 (-2) | 4 (+1) | 4 (+1) | 2 (0) | 2 (0) | 0 (-1) | 0 (-1) | - | 0 (0) | 15 |
北陸信越+東海 | 5 (-6) | 6 (-1) | 6 (0) | 4 (+1) | 2 (-1) | 2 (+1) | 2 (+1) | - | 0 (0) | 27 |
近畿 | 8 (+1) | 5 (-5) | 4 (+1) | 4 (0) | 2 (0) | 2 (0) | 0 (-1) | - | 0 (0) | 25 |
中国+四国 | 4 (-3) | 4 (0) | 3 (0) | 2 (-1) | 0 (0) | 0 (0) | 0 (0) | - | 0 (0) | 13 |
九州 | 4 (-3) | 4 (0) | 4 (+1) | 4 (+1) | 1 (0) | 0 (-1) | 0 (-1) | - | 0 (-1) | 17 |
合計 | 36 (-21) | 37 (-3) | 33 (+3) | 23 (+1) | 13 (-1) | 4 (-4) | 4 (-3) | 0 (-1) | 0 (-1) | 150 |
自民は21議席減ってしまいますが、このほとんどは比例単独議員や惜敗率が低い新人などです。
一方で共産党は志位委員長はじめ塩川議員、赤嶺議員らベテランが落選してしまいます。
また未来の党(旧)も阿部知子議員、青木愛議員らが落選、一方で斎藤恭紀議員が当選する結果になります。
維新、民主、公明、みんなといった中規模政党は大きく増減しない分、10議席を割る小政党が半減するような制度になります。
なぜこのような結果になるかというと、定数が「通常枠」と「優遇枠」に二分されるため、合計の定数であれば議席獲得が臨める小政党は両方で取りこぼしてしまう可能性が高くなるからです。
逆に比例2位や3位の政党が定数減にもかかわらず議席数を増やす結果になるわけです。
最後に「優遇枠」は採用せず定数減とブロック枠見直しだけであればどのような結果になるでしょうか。
自民 | 維新 | 民主 | 公明 | みんな | 共産 | 未来 | 大地 | 社民 | 定数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道+東北 | 6 (-2) | 3 (0) | 3 (-2) | 2 (0) | 1 (0) | 1 (0) | 1 (0) | 1 (0) | 0 (0) | 18 |
北関東 | 5 (-1) | 3 (-1) | 3 (0) | 2 (-1) | 2 (0) | 1 (0) | 1 (0) | - | 0 (0) | 17 |
南関東 | 5 (-1) | 4 (-1) | 3 (-1) | 2 (0) | 2 (-1) | 1 (0) | 1 (0) | - | 0 (0) | 18 |
東京 | 4 (-1) | 3 (0) | 3 (0) | 1 (-1) | 2 (0) | 1 (0) | 1 (0) | - | 0 (0) | 15 |
北陸信越+東海 | 9 (-2) | 5 (-2) | 5 (-1) | 3 (0) | 2 (-1) | 1 (0) | 2 (+1) | - | 0 (0) | 27 |
近畿 | 6 (-1) | 9 (-1) | 3 (0) | 3 (-1) | 1 (-1) | 2 (0) | 1 (0) | - | 0 (0) | 25 |
中国+四国 | 5 (-2) | 3 (-1) | 2 (-1) | 2 (-1) | 1 (+1) | 0 (0) | 0 (0) | - | 0 (0) | 13 |
九州 | 6 (-1) | 3 (-1) | 3 (0) | 3 (0) | 1 (0) | 1 (0) | 0 (-1) | - | 0 (-1) | 17 |
合計 | 46 (-11) | 33 (-7) | 25 (-5) | 18 (-4) | 12 (-2) | 8 (0) | 7 (0) | 1 (0) | 0 (-1) | 150 |
恣意的な数字で制度を弄らずとも、共産、未来、大地は党勢を維持できるわけです。
これでいいんじゃないかと思いますが、皆さんどうでしょう?
自民党案には「各ブロックで、得票数の少ない政党が得票数の多い政党の議席数を超えることのないよう措置する」という制限もあり、まだここからもう一度弄らないといけないことになるようです。
こんな○○○ばかり気遣って複雑なだけの制度はナンセンスでしょう。
※ドント方式の計算は以下のサイトを利用しました。
Election calculus simulator based on the modified D'Hondt method
【追記】
産経は「各ブロックで、得票数の少ない政党が得票数の多い政党の議席数を超えることのないよう措置する」という点にも配慮して、「防止策として第2党の議席配分は第1党と同じ議席数を上限とする」ように計算をしています。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130314/elc13031423190001-n1.htm?view=pc
どのような計算を行ったのか詳細は不明ですが、「優遇枠」で第1党の議席を上回る政党が現れた場合はそのままドント方式での計算を進めてみました。
例えば近畿ブロックを見てみましょう。
「通常枠」15議席は、維新5、自民4、公明2、民主2、共産1、みんな1と配分されます。
次に「優遇枠」残り10議席を維新を除いて配分すると、自民4、公明2、民主2、共産1、みんな1となり、合計では維新5、自民8、公明4、民主4、共産2、みんな2となります。
第1党である維新が5議席しか取れないにも関わらず、自民は8議席を獲得する制度上の問題が生まれますので、超えてしまった3議席を他の政党に配分されるまでドント方式で計算を続けていきましょう。
14議席目まで配分していくと、自民5、公明3、民主3、共産1、みんな1、未来1となります。
このうち自民は「優遇枠」では+1しか加算せず配分するので、維新5、自民5、公明5、民主5、共産2、みんな2、未来1となるわけです。
産経とは計算結果が異なっておりますが、前回の自民案で計算して第1党より第2党以下が多くの議席を獲得してしまったブロック(南関東、東京、北陸信越+東海、近畿)を計算し直してみました。
自民 | 維新 | 民主 | 公明 | みんな | 共産 | 未来 | 大地 | 社民 | 定数 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道+東北 | 4 (-4) | 4 (+1) | 4 (-1) | 2 (0) | 2 (+1) | 0 (-1) | 2 (+1) | 0 (-1) | 0 (0) | 18 |
北関東 | 4 (-2) | 4 (0) | 4 (+1) | 3 (0) | 2 (0) | 0 (-1) | 0 (-1) | - | 0 (0) | 17 |
南関東 | 4 (-2) | 4 (-1) | 4 (0) | 2 (0) | 3 (0) | 0 (-1) | 1 (0) | - | 0 (0) | 18 |
東京 | 3 (-2) | 3 (0) | 3 (0) | 2 (0) | 2 (0) | 1 (0) | 1 (0) | - | 0 (0) | 15 |
北陸信越+東海 | 5 (-6) | 5 (-2) | 5 (-1) | 5 (+2) | 3 (0) | 2 (+1) | 2 (+1) | - | 0 (0) | 27 |
近畿 | 5 (-2) | 5 (-5) | 5 (+2) | 5 (+1) | 2 (0) | 2 (0) | 1 (0) | - | 0 (0) | 25 |
中国+四国 | 4 (-3) | 4 (0) | 3 (0) | 2 (-1) | 0 (0) | 0 (0) | 0 (0) | - | 0 (0) | 13 |
九州 | 4 (-3) | 4 (0) | 4 (+1) | 4 (+1) | 1 (0) | 0 (-1) | 0 (-1) | - | 0 (-1) | 17 |
合計 | 33 (-24) | 33 (-7) | 32 (+2) | 25 (+3) | 15 (+1) | 5 (-3) | 7 (0) | 0 (-1) | 0 (-1) | 150 |